インクルーシブな社会をどう作るか〜sumicco作戦
「小学生以下のお子さんお断り」、「ベビーカーでの入店はお断りしています」。今でもこのような貼り紙を目にすることがあります。
ぐずる子どもにうるさい!と言われた、ベビーカーを蹴られた、抱っこ紐を外された、そんな悲しい話も聞きます。
子どもはまるで迷惑とでもいうように扱われ、公共の場と親子の場は分断されている。私たちの社会は「大人のための場所」と「子どものための場所」を分けることで平和を作ろうとしているように感じることがあります。
逆に子どものための場所は、子どもが好き放題に遊び、親やスタッフがせっせと片付けていることが多いように感じます。
子どもは社会の一員です。どうすれば、子どもと大人がともに過ごす公共の場ができるでしょうか?私は「環境」に注目しています。
行動科学の理論の一つ「COM-Bモデル」では、人の行動には能力(Capacity)、モチベーション(Motivation)、そして環境(Opportunity)が影響するとされています。本人の努力や能力、気持ちのほかに、周りの人の行動や物的な環境、制度的な環境などが人の行動に影響するのです。
発達心理学においても、環境が重視されています。モンテッソーリ教育では、子どもの育ちに重要な要素は「子ども」、「大人」、「環境」とされており(モンテッソーリの三角形)、乳幼児期の教育とは周囲の環境との相互作用から子どもが自ら学ぶこと、とされています。
インクルーシブ社会に向けて、人の行動が変わる環境を作りたいとき、どうしますか?人の行動が変わるには、無関心→関心→理解→意識変容→行動変容の順と思われがちですが、実は理論の世界でも実践の世界でも、行動変容→理解→意識変容の順であることが知られています。やってみたら納得!ということ、皆さんもありませんか?
大切なのは人が行動するきっかけをどれだけ作れるか、なのです。そこでsumicco作戦。街なかの日常空間であるお店に、子どものための小さなコーナーを作る。そのコーナーは小さくてさりげないけれど、子どもの発達を考えてデザインされた空間。それにより、子どもは落ち着いて過ごし、使ったおもちゃを元に戻し、周りの大人も快適に過ごせる空間が生まれます。
子どもが落ち着いて過ごす様子を大人が見ることで、子どもの振る舞いは空間デザインや周囲の大人という環境によって違うことを理解し、子どもに対する意識が少しずつ変わっていく。共生は可能なのだと感じていく。そんなポジティブな流れを作っていきたいと考えています。
今はカフェが中心ですが、レストランや美容室、本屋、コワーキングスペースなどの仕事や学びの場にも広げていきたいと思っています。
オランダでは、銀行や駅、病院などの公共空間が子どもインクルーシブにデザインされているそうです。日本も子どもと大人のインクルーシブな街をデザインしていきたいですね。
皆さんもどうぞご一緒に!